「ユニクロの服って、発色が悪いよね~」などと、服の発色のよしあしを批判されることって多いですよね。
でもその発言って大抵の場合、染色堅牢度のことを考えられていないわけです。
服の発色と染色堅牢度は反比例することが多く、実は色合いの綺麗な服が必ずしもいいとは限らないのです。
染色堅牢度ってなんぞや?と思った人も多いかもしれませんが、
単純にいうと染色の丈夫さの度合いです。
JIS(日本工業規格)によって、等級が定められています。
染色の堅牢さというと、洗濯による色落ちのことを考えられる方もいるかもしれませんが、
それは染色堅牢度の中でも「洗濯堅牢度」という一評価です。
染色堅牢度には、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、摩擦堅牢度などがあり、それぞれについて変色の試験が行われます。
詳細はこちらなど(他にも検索すれば色々出てきますが…)
http://www.qtec.or.jp/jp/index.php?id=481
さて、じゃぁその染色堅牢度って何で必要なのか。
日本人はクレーマー気質な人が多いので、染色が弱い色移りしやすい商品などを作りづらいというのがあるようです。
「あんたんとこのジーンズ買ったら、あたしの大事なバーキンに色移りしちゃったじゃないのーッ!!!
弁償しなさいよッ!!!」
なーんてことになったりするわけですよ。
なので日本の大手アパレルメーカーは、本当は一番いい発色のものを使いたいけれど、
あえて染色堅牢度の等級の高い、けれど発色の落ちる商品を作る、という保守的な傾向になるわけです。
洗濯堅牢度に限っていえば、ヨーロッパなどは硬水で洗濯の色落ちがしにくい、
逆に日本は軟水で洗濯落ちがいいけど色落ちしやすい、なので洗濯堅牢度に気を使うという話もあります。
海外のデザイナーズブランドの服は、確かに綺麗な発色の服が多くあります。
しかしそれらはJIS規格、日本の定めた染色堅牢度試験なんてカンケーねぇッ!って服も少なくないのです。
(そもそも服飾関係者でも染色堅牢度って存在自体を知らない人も少なくないとも聞きますし…)
「モード服なんて所詮長く使わないだろ」とか。
「発色が良いものが最高であり、堅牢度なんて気にしない顧客が買えばいい」とか。
そういう意見だって、そういう服だってあっていい。
しかし日本のアパレルの、絶え間ない努力の賜物であり、真摯なもの作りの姿勢を
「発色悪いよね」
の一言で片付けるのは、なんとも切ない気もするのです。
ましてやこんなブログを読む服オタクの方であればこそ、そんな「発色悪い」発言に出会ったならば、
「染色堅牢度との兼ね合いが大事だよね」
と熱く薀蓄を語っていただきたいものであります。
こんなこと言ってる服オタは、絶対モテないタイプだろうとは思いますけれど(笑)
発色の悪くない衣類が必ずしも色落ちしやすいわけではないことを考えると、
ユニクロに関して言えば、コストパフォーマンスの要因も影響しているのでは?
実際、PANTONEコラボみたいなことをやれてるわけですし。
(染色のコストに関してはよく知りませんが)
こんにちは。
大変参考になる記事をありがとうございます。
ど素人の質問で申し訳ないのですが、JIS規格は国内の企業であれば守る義務があるのでしょうか?
ユニクロなどの大きい企業でしたらわかるのですが、
小さい国内ブランドでもやはり発色が伊仏と比べていまひとつの気がします。
長いこと、生地の質の違いによる色ノリの差なのかと思っていたのですが、もしその規格が邪魔しているのであればそれは大変な問題だと感じます。
> Eさん
> 発色の悪くない衣類が必ずしも色落ちしやすいわけではない
その通りですが、それは程度によりますよね。
発色の良し悪しを左右するのには、生地や染料、染め方も多種多様ありますし、コスト面ももちろん関係あるとは思います。
ただ日本では発色のみを優先しにくい事情があり、またその背景も知られていないのが現状なのだと思っています。
> 9さん
JISについてはウィキペディア等でも詳しく解説されているのですが、あくまで日本の任意規格です。
工業製品なんかは規格統一されていないと困るわけですが、こと服にかんしては規格なんて守る必要はないとは思います。
しかし実際のところは日本の消費者の生活に合った、染色堅牢度の等級の高さを優先する方向になりがちのようです。
専門家ではないので詳細はわかりませんが、発色の良し悪しは生地、染色方法、染料、水の硬質等まで影響するので一概にいえないと思います。
しかし単純に発色の良さだけを優先するのであれば、日本でも似たレベルにすることは可能だと思います。ただそれが日本の消費者の生活に合ったものであるかどうかは難しいところかと…。
かなりのご無沙汰でした、ついでにあけましておめでとうございます。
個人的にとても興味深くて良いエントリーです、とはいえ悲しいかな、一般読者にウケは悪いと思いますが。
>「ユニクロの服って、発色が悪いよね~」などと、服の発色のよしあしを批判されることって多いですよね。
女性ならあるな~と思いますが、男でそんなこという輩いるんですか!?
そんなの見かけたら「野郎にそんなセリフは100年はええんだよ!
いいか、そもそもそんなこと言える程、てめえの眼は~」などと20分くらい説教しますが
それはさておき、染色堅牢度なんて考えても仕方ないと個人的に思ってます
なにしろ堅牢度の高い服なんて見分けつかないですからねえ、
店員さんに色落ちうんぬんのことを質問しても、いつも曖昧な答えしか返ってきませんし。
色落ちする服の横綱であるジーンズが未だに幅をきかせてるんだから
日本人(作り手ではなく買い手、特に男性)に染色堅牢度なんて意識あるんかい?などとも思ってます。
ユニクロ嫌いなんで褒めたくはないんですが、上に挙がっているPANTONEコラボは堅牢度かなり高いですね
ユニクロの服だから、ということで遠慮なく雑な洗い方をしてますが、
数年経っていまだに発色がいいのには正直すごいと賞賛せざるをえないです
ていうかもっと別の色も買っときゃよかった、などと思う今日この頃・・・
> ガケップさん
コメントありがとうございます。
一般読者が読むブログではないと思うので…大丈夫です!笑
染色堅牢度という言葉、概念自体があまり知られてないと思うので、それを知ってもらうのがこのエントリー目的の一つでした。
等級が品質表示タグに記載されているわけではないので、確かに店員さんにはわからないものだとは思うのですが。とはいえ日本メーカーの店頭に並ぶ商品はそういうのまで考えられて作られている、という点がなんとなくわかってもらえればいいかな~と思って。
パントーンコラボについての感想はためになりました。堅牢度高かったんですね。
さすがユニクロ、といったところでしょうか。