渡辺淳弥のやりたかったこと…ギャルソンオムのパッカリング加工について


自分はかつて渡辺淳弥(の特にメンズデザイン)を批判する記事を書いています。
ジュンヤワタナベを斬る!

今日は掌を返して、渡辺淳弥が本当にやりたかったこととは何だったのかを書いてみたいと思います。
(これは当時自分のブログを呼んだ方から頂いたメールを元に、再度調べたり確認した結果の内容です)

ジュンヤ就任後のギャルソンオムの代名詞的存在になったパッカリング(引きつり)加工。
これは何十年も前の古きよきアメリカ時代のワークウエアに使われていた手法が元になっています。


折り伏せ縫い等に比べ、巻き縫いは一発で縫いきることが出来るため大量生産に適した縫い方でもありました。

ただし巻き縫いは名前通り、生地を互いに巻いた状態で縫っていくため、縫い代の部分がどうなっているのかは生地の感覚、最終的には縫いあがってみないと分からなかったりするようです。
巻き込みが足りない、ミシン落ち(ステッチが縫い代からはみだしてしまう)、更に洗って解れてしまい初めて失敗だったと分かる場合もあるそうです。これらを総称してパンクと言います。

当時のワークウエアやデニムに三本ステッチが使われていましたが、それは巻き縫い時にパンクしても三本もステッチかましておけば耐久性は問題ねーだろ、という大雑把というかいかにもアメリカらしい発想から生まれていたようです。
(ついでにパッカリングも起こっててもいいじゃねーか、頑丈につくったったでーという…)

この辺はものすごく詳しいサイトがありますので、気になる方はこちらを参照してみてください。
http://www.e-workers.net/store/13/p1.htm
(古きよきワークテイストが大好きすぎて、しかし現代らしい形に挑戦しているとても素晴らしい服作り屋さんです)

古着のワークテイストのアイテムが概してゆったりしているのは、当時の巻き縫いの技術では急なカーブを縫うのが難しかったため、全てゆとりとして残してしまっていたからだそうです。

またギャルソンオムのパッカリング加工ですが、わざとああいう形にパッカリングさせることは技術的に非常に難しく、ミシンも特殊な古い物を使わないと出来ないようなことではないかと。
そんなことが出来る工場とミシンは日本にはほとんどないんじゃないか…という話も聞きました。
ワークテイストの風合いのある縫い方は今のミシンと技術では難しく、それを追求しだしたら途方も無い苦労であると。

もちろん品質的には低い物なのですが、それでも高い技術と縫える人も少ない、非常に手の込んだ低品質だったのですね。
というわけで、低品質なのに時間と技術が掛かっているため簡単に値段を下げられない商品でもあったのです。

低品質だけれど、古きよき時代の味わいあるワークテイストの服を現代の品質とカッティングと技術で復活させてみたかった。
それが渡辺淳弥がやりたかったことなんじゃないかと今では思っています。
(そのぐらいそういう服が好きだったのかも知れないですが、無口な淳弥の内心は自分にはわかりません)

しかし当時の雑誌も、またギャルソン側も店員さんも、そのデザイナーの意図がお客まで伝わるようにはできていなかったと思います。
低品質な高技術品を、デメリットを伝えずにどういう言い方でデザイナーズ好きに売ったらいいのか…。
メディアが語れなかったにしても、ギャルソン自体も上手く語れなかったことが問題だったのかもしれません。

とはいえ、それをわかっている人はわかっていたし、そこに深く共感する人もいた…。

私自身は渡辺淳弥は今でも好きではないですが、自分の未熟さに自戒の念を込めて、今回の記事を書いてみました。

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コメント

  1. オリグチ より:

    はじめまして!
    いつも大変楽しく読ませていただいております(ブログ移行で過去記事をまとめたあたりから)。

    Alcesteさんほどの知識はないものの、私とすごい近い感性と考えのような気がします!(勝手に親近感。笑)
    モード・ブランドからドレス・クロージングまで語れるところや、
    しかしギャルソン好きなのに盲目的に信仰していなかったり、スーツ雑誌も疑ってかかるあたりが…。
    業界で圧倒的に高評価のオールデンやクロケットをばっさり斬っているのには笑えました。

    今後もぜひ、楽しい記事をお待ちしています!!

    ↓最近は全然服のこと書いてませんが、一応ファッション関係で始めたブログです。
    http://blogs.yahoo.co.jp/ori_guchi

  2. 土口 より:

    ジュンヤを初めて見た時は「凄い!」とか「ぅわ!」とかより「お、お洒落っすね…」って感じでした。着てみたい!と言うより着やすそうと言うか、「この服を身に纏ったら、どんな自分に成れるんだろう!」って妄想が膨らまない分、現実的でイメージしやすい印象です。

    以前の記事も好きですよ、私は。あれはああ捉えてしまって仕方ない事だったと思います。

  3. alceste より:

    > オリグチさん
    自分も大して知識があるわけではないです。
    批判的なことが言いたいわけではないのですが、もっとファッションは「両面提示」があって良いのではないかとは、いつも思っています。

    > 土口さん
    自分はジュンヤのメンズ服は幾つか持ってはいるものの、個人的に何となく品質にガッカリすることが多くて…。デザインがどうこうというより、単純に自分の好みじゃないんだと思っています…苦笑

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