物事の良し悪しと好き嫌いは別だけど…。


最近よく感じるのですが、世の中、好き嫌いと物の良し悪しをごっちゃにしている人が結構いますよね。

そりゃ自分の好きな物=良い物だと思いたいのは当然ですけど、そこはキッチリわけて考えておかないと。

「オレはこれが嫌いだけど、その質は良いと言うのはわかる」とか、「良くない物だとわかってるけど、それでも雰囲気が好きなんだよなぁ」とか、そうやって、きちんと分別ができるのが理想ですよね。

ただやっぱり客観的、多面的な視野で物事を判断するというのは、とても難しいことでもあるわけですよ。
結局本当の意味で客観的になるってのはまず不可能なのかもしれないし。
だから客観的に話してるつもりでも、いつのまにかただ単に自分の好みを押し付けてしまっているだけになっている…。

こんな名言もあります。

「批評家は自らの「好き嫌い」を「是非曲直」のオブラートに包んで差し出すところのインチキ薬剤師である。
人が掴まされるのは―中味は要するに彼の「好き嫌い」にすぎない」(林達夫評論集より)

ま、確かにね~、それは意を得ている気はしますね…。

それと、あばたもエクボ、結晶作用じゃないけれど、好きになるとどうしても盲目的になってしまうというのはありますよね…。

だから物事の良し悪しを語るときは余計に、自分の好みだけにならないようにあえて差し引いて考える、
ニュートラルな視点を心がける必要があるのかもしれません。


最近あるデザイナーズブランドのファンのコミュで、「あなたがそのブランドを好きな理由」というトピックが立っていたのですが、これを読んでえらい悲しくなってしまったワケですよ。
いわく「デザインがいい」とか、「革新的だから」とか、「服にオーラがある」とか、「インディビデュアル(←???インディビジュアル:独特の:ではなくてか?)」だとか、更には「着るとテンションが上がるところ」とか…書いてあった…。

っていうか、それって「好きな理由」じゃ無くて、単に「好きだという表明」でしかないですよねッ!?(笑)

他のブランドにも当てはまるような理由なワケで、「そのブランドじゃないといけない」という理由がほとんど書かれてないわけですよ。

なにがどう革新的なのか、何で着るとテンションが上がるのか、そこをもっと具体的に書いてくれないと、好きな理由の意味にならないんじゃないでしょうか?
小学生の作文じゃないんだから、「良いと思いました(なにが良いのか?)」ということで済ますんじゃなくて~。

せっかく長年のファンなら、好きになるブランドに対する価値観や評価みたいなところまでツッコんで書いて欲しいと思うのですが…。それって高望みしすぎなんでしょうか?

そういうこと考えると、本当はそのブランドの良し悪しなんかわからずに、結局ブランドのネームバリューと、表層的な上っ面のデザインしか見てないんじゃないだろうか?という疑念さえ浮かんでしまうわけですよ…。

結局好きで買っている(ブランドネームで買っている)とかだったら全然文句ないんですが、そのブランドを全て理解していること前提で知ったかぶって語りに入るのは、ちょっと恥かしいと思うので。

さて自分の身を振り返ってみて、自分の好みの押し付けじゃなく客観視できているかというとですね…まぁ難しいですね(苦笑)
特に自分は批判的な文章を書くことが多いので、気を使っているつもりでも、それでも偏ってしまってるところは多いと思います。

ただブログっていうのは客観的に書いているから面白い、というわけでもないんですよね。

バキバキに偏見ありまくりの毒舌ファッションブログが大人気だったりするわけで、
どこかに書き手の好みが出ている方が面白かったりするんですよね。

そのバランスを取るのが相当難しい。

それとちょっと話は変わりますが、自分の好みの範疇外の物を「わからない」で一蹴するのはあまりにも視野が狭いとも思うわけです。

「何故あのブランドが人気があるのかわからない」みたいに、理解できないというのはあまりに狭量だし。
そして理解できない物を軽蔑するのはもってのほかだと思うんですね。

売れる物とか人気のある物、それはくだらないと思っても、やはり売れて人気が出るにはそれなりの理由がある。それを理解した上で、好き嫌いを語るならまだいいと思うんですよ。
理解できないではなく、「理解できるけど納得いかない」というのが、大人の懐の深さなんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうか。

最後にこんな名言を。
「人間というものは、自分にわからないことはこれを軽蔑し、また自分にとって煩わしいとなると、善や美に対してもぶつぶつ不平をいうものだ」(ゲーテ「ファウスト」より)

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コメント

  1. masato より:

    物の良し悪しを見分けるのは難しいですよ。特に生地なんか、見た目や手触りでは何を使っているのか、なかなかわからないです。混紡だとさらに難しい。それに原材料が同じでも(例えばギザ45とかね)、紡績で差がつきますよね。ギザ45というだけなら、確かユニクロにもあったんですよ。以前、アクアスキュータムのシャツにもギザ45の物があったのですが、ユニクロとは価格が大きく違っていました。そういえば、今日、ポールスミスでギザ45を使ったと言うポロシャツを見ました。なんかね、それを使ったと言う証明のような物がついていました。でも、手触りはそれほどいいとは思えませんでしたけど。同じ素材でも差が付くので異素材の比較などとてもできないです。ほんとは、どこぞのカシミヤより良いウールの服があるんですけど。なかなか難しいです。

  2. margielamarni より:

    納得は出来ないけど理解は示す
    という態度が個人的には「好き」です。

  3. テル より:

    これは服だけじゃ無くて全て(狭い意味で趣味)に言えますね。でも、信心に近い感じの方が楽なんで、客観的になるのは難しいでしょうね。自分も好きなブランドはありますが時々「それはあかんやろ」と突っ込みいれます(笑)あまり好きじゃ無いけど「理解」出来るのも色々あります、因みに其の一つはニューバランスのスニーカですね。上手に履いてる人を格好良いと思うし、もの自体全然悪いと思わないですが、自分としては苦手なデザインですね。

  4. Alceste より:

    遅くなりましたが、コメントの返信です。

    > masatoさん
    確かに生地や縫製等の細かい良し悪しを見分けるのは難しいと思います。特にシャツ生地については、よほどはっきり違うものでないと、手触りだけで判断するのは相当年季が必要そうです。

    > margielamarniさん
    > 納得できないけど理解は示す
    この態度を取ることってとても大切だと思うんですよね。ま自分の意見も相手の意見もうまく取り入れていくバランス感覚を持つことって中々難しいとは思うのですが。

    > テルさん
    服だけじゃなくて、趣味と言うか、生き様全般に言えそうですよね。
    まぁ自分も好きなブランドありますが、最近は内心ツッコミまくりです(苦笑)
    ニューバランスのスニーカーは、個人的には選ばないと思うのですが、履き心地は抜群だと思うし、アメカジスタイルなんかにうまく取り入れてる人をみるとうなってしまいますね~。

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