アンリアレイジとミントデザインズ 2012年春夏合同ショーレポート


アンリアレイジとミントデザインズの2012年春夏の合同ショーを観に行ってきました。
というわけでレポートを書いてみたいと思います。

まずアンリアレイジ。
http://www.fashionsnap.com/collection/anrealage/2012ss/

ピアノ伴奏付きで始まったショーは、いつも通りのコンセプチュアルらしくあるべきコンセプチュアルファッション。
女性の体のシルエット自体を変えて新しいフォルムを作り出し、そこに服を当てはめるという。
フォルムを見せやすくするために、前半は白一色で統一、後半はそこにベーシックな柄(ストライプ、水玉、チェック、千鳥格子)を展開していました。


しかし手法自体はすでに過去のギャルソンやらがやってきた物で目新しさはありません。
(もちろん細部の見せ方の違いが重要なのでしょうが)

ショーの見せ方も、チャラヤンのコレクション同様のよく言えば静謐、悪く言えば単調さ。
チャラヤンほどガチじゃない分だけ、なんというか単調さが強調されてしまう気がします。

とはいえ全体的に相変わらず批評栄えする、批評家の好きそうなコレクションでありました。
きっとファッション評論家たちがこぞって、、ギャルソンからフセインチャラヤン等までの系譜を語りつつ、刺身のつま的に最後にアンリアレイジのコレクションを語るいつも通りの流れが展開されることでしょう。

これってなんというか、音楽でいうところのポストロックとかを語るロキノン系ライターとかライナーノーツのイメージなんですよね。
その自己主張あふれんばかりの己のファッション論語るのに、丁度いい存在として、アンリアレイジが扱われている気がします。


そしてミントデザインズ。
http://www.fashionsnap.com/collection/mintdesigns/2012ss/

ロックな音楽に乗せて、こちらはとにかく売れそうな服。というより売るべくしてデザインされた、狙って外さない服でした。

10周年記念ということで、前半はアーカイブコレクション。
これまでのコレクションで発表されたそのシーズンの象徴的な柄のワンピースが次々に登場。
(こちらは復刻して販売するということで、がっちり売り込みも兼ねているという計算高さ)
これでつかみはOKという感じでした。

後半は新作。新規の柄は星柄、キスマーク柄、吹き出し柄、水玉。
今までのミントは柄のグラフィックデザインに凝っていたのが特徴でしたが、今期はどちらかというとベーシックなモチーフです。
というか正直ギャルソンがいかにも使いそうな柄…。(というかキスマークとか過去にありましたね)

しかしそこはミント、ペールトーンでまとめ上げた綺麗な色の組み合わせなど、同じ柄を使っても見事にミント的なコーディネートに強引に落とし込んでいました。
個人的に来期ミントはギャルソントリコ辺りの顧客をまとめてかっさらいそうな勢いを感じました。

もはやアイコン化したピンクソールの靴も、ヒールとソールが一続きになったウェッジソール化でよりピンクソールが強調されていました。これは間違いなく売れそうです。

アンリアレイジがロキノン系大好き語りだとすれば、ミントは(ちょっと外した)J-POP。
批評栄えしないリアルクローズファッションというイメージです。


この二つが合同ショーを行う理由。
デザイナーさん同士が仲が良いという話を聞きますが、実はそれ以上にこの2つのブランドは、足りない部分を補い合っている気がします。

アンリアレイジは、いかにもモード業界が好きそうで批評家栄えするが、実際にバカ売れして固定ファンががっちり付いているわけではないから、多くの顧客が見たがるショーではない。
一方のミントデザインズはリアルクローズで(とはいえノルディック柄プリントに乗っかるドメブラ流行を踏襲するブランドではないのですが)、固定ファンをがっちりつかんで売れる仕組みを作り上げている。
けれども批評家栄えしない、(モード誌的な)メディア受けしないブランドに思えます。

実際のショーに来たお客さんも、特別客を別にすれば、ミントの服を着た若い女性客を多く見かけました。
(あとは今回は招待客をweb募集したようなので、アパレル業界に携わる、もしくはそうなろうとしている学生さんのような方も多かったですが)

この2つのブランドは、本来1ブランドで成し遂げるべき課題を、補い合っている。
だから大きく外さない合同ショーが成せるのではないかと。

それは良いことでもありますが、本来なら足りない物を自力で作り出すべきではないのか?
と、そんなことを考えさせられるショーでありました。

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