ライセンス商品はアリか?(2)


さてライセンス商品はアリかナシか?の続きです。服飾業界でのライセンスはどうなのか?

ブランドイメージを壊さないように大切にしながら、うまくライセンス契約を結んでいる成功例としては、三陽商会でしょうか。バーバリーの日本正規代理店です。

バーバリーの英国製コートは、元々縫製に関しては最高峰といえる定番商品です。(イタリアの手縫い製品とかは別として) ライセンス商品である日本製のコートは定価半額程ですが、それでも縫製に関しては相当丁寧です。元々三陽商会自体が、コート作りにかけては定評のある会社でもあるからです。

今でこそバーバリーといえば売れ筋のイメージがありますが、テコ入れでコレクションを始めるまでは本国での評判はイマイチだったとか。そんなのもあってか、三陽商会は日本独自のライセンス商品の発売を企画するのですが、やっぱり始めは相当難色を示されたようです。

ただそれまでの厳しいライセンス商品の作りにより信頼を得ていた三陽商会だからこそ、日本独自ラインのバーバリーブルーレーベル(後に男性向けのブラックレーベル)を作る事を許された。(一応本国で企画チェックもされているようです) バーバリーというテイストを使って、日本人受けするように計算されたそのラインは大成功を収めました。


デザイナーズブランドで言えば、ポールスミスヴィヴィアン・ウエストウッド(レッドレーベル)が代表的成功例でしょうか。どちらも本ラインのテイストを、うまく日本人好みに落とし込んだライセンス商品を作っていると思います。ただ時にあざとすぎて(笑)、それがファッションマニアにとっては、イマイチ好かれない場合も多いようです…。

しかし本来デザインで勝負すべきデザイナーズブランドが、ライセンス契約を行うことでは、失敗例の方が少なくない…。その代表例としては、オズワルド・ボーテングなどでしょうか…。

オズワルド・ボーテングというと派手なビビッドカラーを使ったスーツが主力だったのですが、当然そんな洋服が日本人に受けるはずもない。(その時点でマーケティングから失敗してんじゃないのか?って気が…笑)

その後ライセンス契約に切り替え、「ミステイク?オズワルド・ボーテング」とブランド名まで変えて最後の勝負に挑むのですが、ホントにミステイクしてしまったという笑えないオチがつきます。その後オズワルド・ボーテングは日本から撤退してしまいました。

これらの例から考えるに、ライセンス商品化の成否はそのブランドイメージの管理だけでなく、どのように日本特有の文化になじませるかにかかっているのだと思います。そしてもう一つ、いかにデザイナーの思惑がうまく反映されているか。

ライセンス商品のよい点は、まず日本人の体形にあわせたパターンへの変更が行われていること。これって実はとても重要です。それと日本は品質要求水準が高いため、大抵の場合品質は向上します。そして何より嬉しいのが低価格化。

逆にライセンス商品であるがゆえに、本国で生産される独自の雰囲気を出すことは至難の業ではあります。それにライセンス商品は代理店の思惑によって、商業主義に偏りすぎることも少なくない。また本来のデザイナーの手を離れて、ニュアンスの違う商品が乱発される危険性もある。

ただのブランドネームがついているに過ぎないライセンス商品は、もはやそのデザイナーの価値を失ってしまっている…と考えている人も多いのではないでしょうか。

ただこれには代理店の問題だけでなく、デザイナー本人にも自覚が足りないのではないか?という気がします。

例えば完璧主義者として有名なドリス・ヴァン・ノッテンは、ライセンス商品についても相当厳しい管理を行っていたそうです。その例として、盛夏物のスーツなのに決して裏地を半裏にすることを許さず、総裏地にこだわったと言います。(ちょっとおかしいこだわりだとは思いますが…笑)

ライセンス商品を代理店任せにせず、デザイナーがきちんと企画チェックを行えれば、デザイナーズブランドでもよいライセンス商品が作れるとは思うんですね。

デザインで勝負するのが当たり前のデザイナーズブランドだからこそ、逆に言うとライセンス契約自体にも100%納得いくものを作らなければいけないはずなのです。それをしないということは、いかに事情があるとしても、デザイナー自体の怠慢と考えられても仕方がないと思うんですね?

ライセンス契約が失敗する例はたくさんありますが、それが代理店の性だけとは思えない…万一代理店がどうしようもなければ、デザイナーが厳しく管理すればよい、ライセンス契約を辞めれば済むだけの話なのです。人任せにしておいて成功できるほど、世の中甘いはずがないのです。

つい最近、ベルンハルト・ウィルヘルムが完全ライセンス契約し、全商品を日本製にするという驚きのニュースがありました。低価格化、品質向上が取り上げられるなか、今までのその国独自の雰囲気やデザイン性を守り通すことができるのか、非常に不安と注目したいところです。

ただデザイナーズブランドのライセンス契約にはまだまだ大きな魅力が秘められていると思います。今後に多いに期待したいところです。

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