メンズモードには多大な制約があるようです。
川久保玲は「メンズには制約があり難しいが、その分挑戦のしがいがある」と言っています。
ところが同じように、メンズの制約を意識しているデザイナーはとても多い。ヨウジヤマモト、トム・フォード、エディ・スリマン、マックイーン、そのほか名だたる一流デザイナー達が、メンズの制約について川久保玲と同じように語っています。
ではそのメンズの制約とはなんなのか?
その理由の一つは、メンズには基本となるスタイルが確立されているからではないでしょうか。
イタリアクラシコを代表とするようなクラシックな着こなしという物が、流行とは別にきちんと確立していて、メンズのクリエイションはそのクラシックの理解と再構築からはじめなければならなかったりするわけです…。
それに性別による制約(スカートはかなかったり)や社会性による制約(基本的に職場ではスーツスタイルが求められたり)や、基本アイテムが限られているってのもありますね。
例えば男性用スカートを作ろうと思ったらトランスジェンダーの問題から考えなければならないし、オンでネクタイ無しのスタイルを提案するためには、社会性そのものを考慮しなければならないわけですし。
女性服はそういう制約が薄く、クリエイションの幅が広いというのはあると思います。
逆に男性服には社会的制約が強く、クリエイションはその制約を意識した上で行わなければならないため、非常に難しいといえるのではないでしょうか。
実際服飾関係では由緒正しい装苑賞でも、メンズ服で挑戦する人はほとんど皆無ですしね…。
世界的デザイナーである川久保玲やヨウジは、やはりレディースだけでなくメンズでも挑戦的な服作りを行ってきました。
ところが、レディースでは未だに素晴らしいクリエイションを行ってモードを牽引しているヨウジやギャルソンでさえ、今やメンズでは自己の過去デザインを復刻するようになってしまいました…。
ギャルソンなど復刻ラインまで作り、毎シーズン復刻シリーズを行っていくとさえ言っています。時代に合わせて過去のデザインを再構築する…そういうものであるなら良かったのですが、実際にはかつてのパターンとほとんど同じような、全くの縮小再生産が繰り返されているのですね。(明らかな商業主義的理由でしょうけど…)
制約の強いメンズにおいては、全く新しいデザインというのは難しいのではないか。そして極論すると、それならクラシックさえ確立されていれば、モードというものは必要ないのではないかとさえ思えてしまいます。
メンズ問わず常に新しいものを見せて欲しいと思うけれど、中々難しい問題ですね。
しかしまぁ昔の良いコレクションを復刻してくれるってのは、ファンとしては嬉しかったりして…(苦笑)
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