20世紀末、およそ98年~2000年はメンズモード界が爆発した時期だったと思います。
今じゃ信じられないかもしれないけれど、モードが隆盛を極めたいい時代もあったんです…。
まずコムデギャルソン・オムプリュスは、ライフワークともなりえる、表裏逆のシームが表に出たデザインを発表。爆発的人気で、立ち上がり(新作初回発売日)から全ての商品がほとんど完売するほどの勢いでした。
バーニーズニューヨークなんて、プリュスコーナーが何もなくなってしまうほどだったとか…。(ちょっと大げさか笑) とにかくあの頃はギャルソンなどの立ち上がり待ちに行列ができるくらいの人気でした。
プラダがメンズを本格的にはじめたのもこの時期でした。まだニールバレットがプラダに在籍していた頃です。三角ロゴのバッグが流行っただけじゃなく、当時の服のデザインは面白かったですよ。
特に靴は大人気で、ベルクロ使いの靴、プラダスポーツの赤ライン入りの靴は、都内では即完売。いわゆる丸井系ブランドにこぞってパクられる程の素晴らしいデザインでした。何しろ当時の雑誌の靴特集といえば、プラダやシルバノ・マッツァ(プラダの靴を作っているファクトリー)の特集ばかりだったのです。
それからベルギーのアントワープという小さな町から、アントワープ王立美術アカデミー出身の新進気鋭のデザイナー達が猛威をふるい、それにあわせるように、各誌でモードが特集されました。マルタンマルジェラ、ダークビッケンバーグ、ドリス・ヴァン・ノッテン…。
毛色は違うけれどヘルムート・ラング、そしてトム・フォードが建て直しをはかり、人気ブランドに押し上げたグッチにもパワーがありました。
また自分は得意分野ではないですが、日本でも各種裏原系、そしてそれを代表するエイプやアンダーカバーが大人気で、限定物発売日に人が行列をなすという光景が良く見られたのです。(限定物がすごいプレミア価格で取引されたりして) 裏原系がファッション業界全体へ与えた影響は大きかったと思います。
それから鳴り物入りでデビューを飾ったのが、ラフシモンズとニールバレット、とにかく雑誌に煽られまくったせいでデビュー時から大人気でした。方向性は違うデザイナーですが、品薄で入手困難だったりして、余計にヒートアップ…。予約完売も当たり前。
自分もラフシモンズのシャツ買いに、わざわざ原宿のワンデイ(民家のど真ん中にあってわかりにくい)とかまで行ったりしました。若い思い出です(笑)
特にあの頃のセールはすごかったですね。開店前から行列ができてたりして…。場所によっては入場規制されてたりして。DCブランド全盛期程じゃないにしろ、今じゃありえないと思います。最近じゃいかにセールが込むといっても、そこまでブランドに執着している人っていないですよね。
そして今や伝説と化したジルサンダーの引退劇…。
しかしモード全盛期も今ではすっかり落ち着いてしまいました。というかメンズモードがつまらなくなったように思います。
ヨウジもギャルソンもメンズについては、かつての名作の復刻を繰り返すようになってしまいましたし…。
不況のせいなのか、大手ブランドのコングロマリット化のせいか、モードが停滞しつつあるのか、理由は色々あるのかもしれませんが、またあの頃のように、全てにドキドキさせてくれるような時代を夢見てしまいます。確かにこだわりある素晴らしいクリエイションをするデザイナーもいるのでしょうが、あまり表舞台に上がってこない気がしますし。
過去への郷愁ばかりになってしまうのが、今のメンズモードと自分の悲しいところなのかもしれません…。