The study of COMME des GARCONS~スタディ・オブ・コムデギャルソン~


スタディ・オブ・コム デ ギャルソン
南谷 えり子
4898151000


スタディ・オブ・コムデギャルソンを読みました。単純に読みづらいけど面白い(笑)

内容を簡単に説明すると、コムデギャルソンの今までの軌跡とクリエイションを解説した本です。

ギャルソンの歴史から、川久保玲のクリエイター、デザイナーとしての作品に対する姿勢と挑戦を描きつつ、一方でビジネスウーマンとして経営手腕を発揮する違った側面も語られています。

欧米服飾文化の破壊としてのボロルックと黒の衝撃のデビュー、そして全く新しいパターンの創造や、西洋ではありえなかったアシンメトリーを多用するなどの挑戦。全てにおいて川久保玲の反骨精神に貫かれたクリエイションは、時に感動的ですらあります。


そんな中でも「バイアスの魔術師」ヴィオネのパターンについての話題を出てきたりして、中々あきさせない語り口。

これらの視点と解説は読み応え充分で、コムデギャルソンという前衛的モードを解体してわかりやすく説明してくれてます。

ただホントのギャルソン好きからは批判も受けているようです。なんでも絶版になっているコムデギャルソンの書籍と比べて、掘り下げが浅いとか。しかしこの本は現存入手できる中で唯一のコムデギャルソン解説本であり、また初心者にもわかりやすく噛み砕いて解説されています。

そういう意味では、ギャルソンファンならずとも、ファッション好きにもお勧めできる本じゃないかと思います。
ただ残念ながら、この本はほとんどレディースについての視点でしか語られていないのです。

この本の著者は「ファッションには、ア・ラ・モード(新しく生まれた流行)とデモーダ(過去の流行)しかない」と語っています。しかしそれはメンズには当てはまらないのではないでしょうか。

多少の流行による影響はあっても、メンズには純然たるクラシックが確立されています。だから新しい流行が生まれたからといって、クラシックスタイルが過去のものになってしまうわけではないのです。そういう意味でファッションが新と旧とで語られるのはレディースでの視点であり、メンズとはかなりの差異があるように思います。

また著者はギャルソンには「既存の発想にとらわれない自由なクリエイションがある」と言っていますが、メンズではちょっと違うとも思うのです。

川久保玲は別のインタビューで「メンズには制約があり難しいが、その分挑戦のしがいがある」とも言っています。彼女はメンズでは「クラシックの破壊と再構築」をテーマにあげることが多いのですが、メンズの制約という範囲を充分意識した上で、その限界に挑戦する素晴らしいクリエイションを作っていると思うのですね。その証拠にギャルソンはアシンメトリーというレディースではありふれた手法を、一切メンズには持ち込もうとしません。

もしこの本がもう少しメンズについての考察も書かれていたら、もっと面白い物になったのではないかという気もしています。どうでしょうか?

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