落合正勝「男の服装術」~クラシックスーツ、スタイルについて


[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで
落合 正勝
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ファッションブログを書く以上、絶対に書かなければならないと思っていたのが、クラシックスタイル(クラシックスーツ)についてです。

そしてファッションをこよなく愛する男性がすべからく読むべきなのが、落合正勝氏の「男の服装術」です。
クラシックスタイルとは、いつの時代も変わらない、「最上級の普遍的な着こなし」のことです。

年2回コレクションを行い、流行を生み出し続けているモードも、その基本はクラシックスタイルにあるといえます(特にメンズでは顕著です)

落合正勝氏の「男の服装術」は、クラシックスーツ、スタイルの着こなしを徹底的に解説してくれた一冊です。
服飾評論家の落合正勝氏は多くの著書を残していますが、その中でも最も基本の一冊、最初に読むべき本がコレです。
スーツ、靴、ネクタイ、シャツ、靴下などの選び方から基本的な着こなしまで、それこそ微に入り細に入り説明してくれます。


最初は基本となる3つのスーツスタイルを説明。英国調クラシック、アメリカントラッド、ラテン系(クラシコイタリア)それぞれの違いについて書いています。

その後は靴、シャツ、ネクタイ、靴下と、それぞれの歴史的背景やディテール、知識、なにをどう選ぶべきかの基準、そして着こなしをとにかくこと細かく解説してくれます。
「男の服はミリ単位」といいますが、まさしく「シャツの袖はスーツの袖口から1.5センチほど出す」というところまで、とにかく全編にわたり徹底した細かさ。

それと「投資すべき物の順位」は目から鱗ものでしょう。
投資すべき順序は、靴、ネクタイ、シャツ、スーツ。
普通に考えるとスーツにお金をかけそうなのですが、著者はこう語っています。

「クラシックで上質な靴とネクタイは、スーツが上質でもそうでなくても、スーツスタイルを際立たせる。逆に靴とネクタイが貧相であれば、それが例え注文服であっても、全体の印象は驚くほどみすぼらしくなる」

そして「ブランド名より先に服装術を身につけることは大切である。服が具体的に見えてくるからだ」と、痛烈な一言。

クラシックスーツがビジネス(公的なもの)と切っても切り離せない、社会性を持つものであることも説明されています。

クラシックスタイルは永続的なものであるから、とにかく最初は徹底的に基本の着こなしを身につけること。正しい装いが身に染みてわかれば、その後好きなものを着ても、応用が利くわけです。
この本にはそのためのノウハウがパンパンにつまっています(笑)
メンズクラブやメンズEXで特集される基本の着こなしも、結局は落合正勝氏の「男の服装術」を踏襲しているんですね。
そういう意味でも、この一冊で雑誌数冊分に及ぶ価値があると思います。

そしてこの本で基本の着こなしを学んだら、次はできれば「男の服装 お洒落の基本」を読んで欲しいところです。
こちらでは、「男の服装術」以上に深い知識と着こなし、お洒落の奥深さについて語られています。

「男の服装術」は汎用的で、選ぶべきアイテムの具体的なブランド名などがほとんど載っていませんでした。
それに対して「男の服装 お洒落の基本」では、良い物、素晴らしい技術を持ったテーラーのスーツなどが具体的に書かれており、著者自身が身につけて得た経験を語っています。
「男の服装 お洒落の基本」では、わずかながらデザイナーズスーツについても語っています。

落合氏はデザイナーに敬意を払いつつもこのように語っています。

「彼らは一見新しいスーツをデザインしているように見えるが、決してそんなことはない。クラシック、つまり英国のスーツを根底に、それをどんな風に砕くか腐心しているに過ぎない。砕くというと語弊があるかもしれない。新たなクラシックを構築しようとしているのだ」

「一流のデザイナーたちは、クラシックを学習し、学習の後に、それを元に服をデザインしている」

「クラシックスタイルは、デザイナーたちの原点でどこかにクラシックなスタイルが残る。残しているというべきか。クラシックスタイルを学習しなければ、デザイナーの服が分からないといった理由もそこにある。ものごとは、一度原点に立ち帰れば分かりやすくなる。僕たちも学習しなければならないのだ。学習すれば、デザイナーと、自分とのクラシックに対する同質感が分かりやすくなる。似合うブランドが必ずでてくる」

クラシックスタイルを身につけることによって、モードを着こなすという応用力も生まれてくるということでしょう。
そういう意味でも「男の服装術」はクラシック好きはもちろんのこと、モードにしか興味がないという人にもぜひ読んで欲しい一冊です。

そして最後にこの引用を。

「デザイナーたちは時代の流れを読むことには長けているかもしれないが、時代の流れは、カルダンの例を引くまでもなく、ほんの短いあいだのものだ。加えて、人も、時代とともに変わっていく。その遠大な人と時間の流れに、じっくりと腰を据えることができるのは、今までがそうだったように、クラシックスーツしかあり得ない。それがクラシックスーツの永続性である」

流行を取り入れる着こなしも確かに面白いのですが、クラシックスタイルというぶれない基本的な着こなしも大変エレガントであると思います。

クラシックを基本としつつも、モードをバランスよく取り入れていくことが、更なるお洒落のステップアップにつながるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

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コメント

  1. 三輪 昇一 より:

    スーツは男の品格を出す重要アイテム。いわは名刺代わりだと思う。だから自分は絶対に妥協はしません
    色は濃灰もしくは紺、柄は無地、stripeのどちらかです。そして必ずA,Tharthtonのsuspenderを用いる。靴は当然黒のバルモラルです。ブランドに拘る必要はありません。自分はbritishが好きなので、あくまでも源流主義を貫きます。そういった意味では南青山にあるテーラー&カッターが一番お薦めですし自分にとっては行きつけの店でもあります。

  2. 三輪 昇一 より:

    世界最高の職人 有田一成氏の手掛けるclothesは本格派!唯一無二の価値観。自分はもう他の店には行けません!

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