アークテリクス アロー22の3つの問題点


(アークテリクス) ARC’TERYX バックパック 22L ARRO 22 [アロー22]
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アークテリクス(Arc’teryx)のリユック、アロー22。
ビームスがタウンユース用に大々的にプッシュし、一時期は大学生御用達とまで言われたアウトドアブランドの一番人気バックパックである。
しかしやたら絶賛&片面提示されまくりで、そのデメリットについては一切触れられていない状況が気になった。そこで今回はアロー22の注意すべき3つの問題点について書いてみようと思う。


生地コーティングは3年しか持たない!?

アロー22は売りの一つとして防水性能の高さを謳っている。強度の高いバリスティックナイロンを表生地に使用、裏地にはハイパロンというこれまた耐性ゴムを使用とのこと。
(ハイパロン(クロロスルホン化ポリエチレン)はゴアテックス等が開発される以前はアウトドアブランドでよく使われていた素材である。しかし焼却時有害物質を発生するなどにより現在はほとんど使われなくなっている。なので必ずしも優位性のある素材とは言えないようだ…)

しかし実際には防水性はそういった高機能素材が担っているのではない。素材表からは省略されていることが多いが、アロー22では防水性を確保するためにPUコーディング(ポリウレタンコーティング)がなされているのだ…。

フェイクレザー素材等に使用されているから知っている人もいるだろうが、クリーニング屋でトラブルの絶えない素材である。
その寿命は製造から2~3年…。使わなくても劣化し、劣化が進行するとコーティングが白化してポロポロ剥がれてしまったり、表面がベタついてしまう。また饐えた臭い、酸っぱいような鼻につく臭いが発生。とても実用に耐えない状態となってしまうのだ。

実際アロー22を使用していた人から聞いた話でも、コーティングの剥がれと臭いが発生して捨ててしまったとのことだ。

ではアロー22以外の、一般的なアウトドアブランドのバックパックはPUコーティングされていないのかというと…。がっつり裏地に使用している…(笑)
本格登山用バックパックでも裏地PUコーティングされている物は多い。ただし劣化した場合のPUコーティングを重層で洗い落とすといったメンテナンスの仕方もわりと知られている。
ガチ登山では最大限の安全性を優先するわけで、そのために多々耐久性を犠牲にしている。
ただデイリーユースでは耐久性を犠牲にしてまで防水性能を求める必要はなさそうにも感じる…。

止水ファスナーは壊れやすい?

アロー22が防止性のために取り入れているもう一つの仕様が止水ファスナーである。
現在ではアウトドアウェアでも、軽量化と防水性の高さから止水ファスナーが主流となっている。なのでそれ自体は優れたパーツだと言えるのだが。
しかしこの止水ファスナーも高性能ゆえに耐久性が犠牲にされているのである。実はこちらもポリウレタン(フィルム)を使用しており、また複雑な機構上劣化&故障が避けられないパーツでもある。
デイリーユースで使用する場合、耐久年数2~3年とのこと。もちろん修理しながら使えばいい話なのだが、アロー22はその点にも問題がある。(詳しくは後述)

一般的なバックパックでは止水ファスナーではなく旧来のジッパーが使われている。
(PUコーティングはともかく、)止水ファスナーを使用しても完全防水とは言えないため、雨天時にはバックパックに別途用意した防水カバーを被せて使う。

PUコーティングも止水ファスナーについても、デイリーユースでは雨を気にせずに使用できるのは重要な利点ではあるが、単純な優位性とはいいがたい。防水性は方向性の違いでしかなく、それを売り文句とするなら耐久性とのトレードオフであることも明記すべきなのではないかと思う。

修理費用がバカ高い!?

アウトドア用品というのはギリギリまで性能をチューニングしている影響で、耐久性を犠牲にしていることも多い。命がけでガチ登山する人にとっては、機能性第一なのは当たり前。
しかしそんなアウトドア用品でも、バックパックは比較的耐久性が高く長期使用されることの多いアイテムである。複雑な機構が集中していて壊れやすいパーツも多いのだが、それゆえに修理しながら愛用する人も少なくない。
だから(バックパックに限ったことではないが)、有名アウトドアメーカーは万全の修理体制を整えている所が多いのである。

ところが、アークテリクスは基本的に日本国内での正規修理ができないメーカーなのだ…(驚き)
アークテリクスの現在の日本正規代理店であるアメアスポーツでは正式な修理を行っておらず、カナダ本国に郵送して修理というパターンになる。
結果、修理期間は長くなり(2ヶ月ほどらしく)、送料等が含まれる場合もあり修理費用がバカ高くなる。アロー22などは本体購入価格の半額くらいの修理代金になることもしばしばだとか。

はたしてそれで修理しながら使っていくかどうかは疑問だ。
(※正規店購入の場合最大3割引きになるそうではあるが…購入期間等細かい制限がありかなり不便なことに変わりない。もちろんネットなどの並行輸入店購入では初めからその対象外である)

バックパック専門メーカーのグレゴリーなどは生涯補償を掲げており、比較的早い期間&安い修理費用で済むことを考えると、その差は歴然だ。

[グレゴリー] GREGORY 公式 バックパック スケッチ22
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それでもアロー22を選ぶ理由

もちろんそれらのデメリットをわかった上で購入するのであれば、それは個人の自由だ。
アロー22はなんちゃってアウトドアリュック、3年くらいでおしゃかになる使い捨てバッグでよい、という覚悟で使うのなら、かっこよく使い勝手良いバッグだと思う。
もちろんアークテリクス自体は非常に優れたアウトドアブランドであることは間違いない。

ただ今回のエントリーで書きたかった一番の問題点は、そういったデメリットを伝えない雑誌や販売店のあり方だと思う。
ビームスのアロー22の商品ページにはこう書いてある。
「ハイキングからタウンユースまで幅広く、しかも永くご愛用いただけるバックパック「ARRO」です」と。
逆にハイキングに使えないリュックなんてあるのか?通常このクラスの20Lのバックパックならトレッキング(軽登山)くらいには使用できるはずななのにだ。
「「トレッキングにも使えます」とか「10年使えます」とか商品説明には一切書いてないよ~、アウトドアでかつ長年使用できると考えるのは買い手が勝手に勘違いしてるだけだよ~」という言い訳の気がしてしまう。
アウトドアブランドのイメージを押し出しながら説明不足なのは、それは不誠実ではないのだろうか?

流行っているからとか、見た目のカッコよさだけを取り上げて、宣伝文句売り文句で売れるだけ売りさばく。個人的にはそういったアパレルの姿勢そのものの歪さを感じてしまう商品の一つである。

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