ゆとりもわかる映画解説「パラダイス・キス」


パラダイス・キス [Blu-ray]
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「俺の愛するジョージがどこにもいねぇッ!」
と原作ファン全ての人が叫んだと思うこの作品!
まぁミスキャストは始めからわかっておりました…涙目

でもここまで酷いとは…ちょっとビックリなので、今回ブログ記事にしてみます。

そもそも日本には成功したファッション映画というのが少ないです。
近年だと「下妻物語」とか「NANA(一作目)」くらいでしょうか。(「さくらん」は微妙なところか…?)
NANAは漫画以上に立派なヴィヴィアン宣伝映画になってましたし(笑)

とはいえどちらも原作付き、ファッション映画が少ない理由は原作頼みの邦画業界で、ファッション原作が少ない理由でもあるような気がします。
(そもそもファッション映画観たい層は海外のお洒落ムービー見るから邦画なんて眼中にないのかもしれませんが…)


でこの映画ではキャラクター設定が原作と変わっています。(まぁ映画だからよくある話っちゃ話なんですが…)
原作ではブランド「パラダイスキス」の面々は、主人公格のジョージを除くと、パンクファッション、ロリータファッション、女装、という面々です。
ファッションではメインストリームではない、疎外された立ち位置の人々をキャラクターとしてピックアップしています。

作者がパンクファッションやロリータファッションが好きだ、というのもあるでしょうが、女装を持ってきているあたり、結構故意犯的に配置しているのではないか…と思っていました。

ところが映画ではこのキャラ設定はかなり変えられています。
ロリータファッションのキャラがギャルファッションに!
パンクファッションキャラは全然パンク関係ないまろやかな感じに。
脚本上全然関係ない、大人の事情炸裂のキャラ変更ですよ!

大切な最初の15分のキャラ紹介シークエンスで、このキャラ設定変更を見て、
「ああ、コレはファッション映画ではなく、ファッションネタの北川景子と向井理の恋愛映画なんだぁ…」
と完全に観客に覚悟(失望)させてくれるわけです。

最初の15分で映画のテーマはっきりさせてくれる、親切設計映画ですよ!

もう脚本が悪いとか原作とラスト違うとか、コンテストのドレスが全然パッとしないとか、北川景子のコメディ演技が下手だとか、キャラたちの動機付けがいまいち意味不明だとか、向井理がキャラ設定関係なくシナリオの都合上いきなり怒り出したりキスしだしたりとか、
そのヒロインとの初キスシーンが、観客から全く見えないアングルというキスシーンのお約束を守らない最低撮影だとか、その後ではきっちり撮影してるとか…。もうその辺は「どうにでもなーれ」という気分にさせてくれます…。

この映画の見所ですが、向井理の歩くシーンのアップと、永瀬嵐役の賀来賢人の足踏みミシン使ってるワンカットです。
ちなみにどちらも最低です!(笑)

向井理の歩くシーンですが、「俺のジョージがガニマタ歩きだとッ!?」という具合に、完全にカッコ悪いガニマタ歩きのアップを二度も見せ付けてくれます。
向井理は長くサッカーをやっていたらしいので、その影響でガニマタになっているのかもしれませんし、もしかしたら歩くシーンのアップは本人じゃないかもしれません。
が、どちらにしたってダメじゃないっスか…?

松田優作は歩くシーン、走るシーン一つとっても、いかにカッコよく見えるか、その役に合ったように見えるか研究し尽くしたといいますが、役者魂ってそういうところに出るものだと思うのですね。

一方の賀来賢人のミシン使うシーン。
賀来賢人はこの撮影のために足踏みミシンを練習した…とインタビューで聞いた覚えがありますが。
原作にも映画にも「俺たちは遊びでミシン踏んでるわけじゃねぇんだよっ!」って台詞出てきますが、
完全に遊びでミシン踏んでました、ありがとうございました!

自分は服作りについては全くわかりません。しかし物心付いた時から服作りを見て育ってきたのでそれが上手いかどうか位は感覚でわかりますよ…。

日本だって侍映画なら殺陣の手解き受けて散々練習するでしょうし、海外だとサムライミの作ったなんちゃってマカロニウエスタンですら、早打ちコンテスト優勝者の銃指導を受けてますし。
一瞬しか写らないシーンでも、むしろ一瞬しか写らないシーンだからこそ、そこに力を入れるのが役者魂なんじゃないか…と思ってしまうわけです。
(こんな映画にそんなに余裕も力も入ってないって?)
でもたったワンシーンでも服作りの本気さを感じさせてくれる物がこの映画に挿入されていたら、もうちょっと変わっていたんじゃないか…と残念な気持ちです…。

この映画で個人的に良かったと思ったのは、イザベラ役の五十嵐隼士です。
性同一性障害であろう、女装している難しい役どころです。
この手のキャラは実際見るとオカマっぽくなってしまったりコメディ過ぎたりしてしまいがちだと思うんですが、自分は違和感なく見られました。
これって結構役作り大変だったんじゃないかなぁ…と思ってます。
(ただその演技やキャラも尺の問題で添え物扱いしかされてないですけど…)

とはいえ、まぁ人気原作のファッション映画、かつデートムービーとくりゃー、
ツタヤでバシバシ借りてかれてそうなんで、一つ覚悟して観てくださるように!

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コメント

  1. 在義 一 より:

    嫌な予感はしてましたが、その通りでしたか。
    これ、何年か前にアニメにもなってますけど、そっちの評価ってどうなんでしょうね?

  2. alceste より:

    > 在義 一 様
    コメントありがとうございます。
    原作ファンは多分失望してしまうと思いますね。
    ただそういうとらわれが無く、ナチュラルに向井理と北川景子みたい人なら時間つぶしにはいいかもです…。
    とはいえやっぱりファッション映画としての「お洒落さ」というか見せ場みたいなものは足りないかなぁと。

    アニメ版は第一話だけ観たことがありますが、主人公の声が山田優で全然合ってなかった印象でした…苦笑

  3. ゆき より:

    面白いレビュー、楽しく拝見しました^^
    そうですか、この映画そのうち見たいと思ってましたが
    なんだかなあ。。。なクオリティなのかな(汗

    > 一瞬しか写らないシーンだからこそ、そこに力を入れるのが役者魂なんじゃないか

    おっしゃりたいこと、非常~によくわかります。

    わたしはIT屋なのですが、ドラマなんかで
    一瞬しかうつらないタイピングのシーンを見ただけでも
    「あ、こいつほとんどパソコン使ってない奴だな」
    とかすぐわかります。

    いやべつにそれでも作品として面白ければいいんですけどね。
    ちょっと現実に引き戻されてしまう瞬間ですw

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