そぎ落とすことの怖さ…


シンプル・イズ・ベストという言葉がありますが、でもこの言葉はクリエイターには重過ぎる一言です…。

絵を描く人にとっては、絵の中にたくさんの物を緻密に書くよりも、一つの物を描くことの方が断然難しい。

そぎ落とされたシンプルなものほど、描くのが難しくなっていくのです。デザインも同じ、シンプルな物ほど難しい。

だからデザイナー達は、やたらと空間を埋めることに執着します。イラストは隅々まで緻密に描こうとし、雑誌は所狭しと情報を載せ隙間を埋める。ファッションは様々な小物を使って、ガチャガチャした着こなしになっていく…。

シンプルがなぜそんなにも難しいことなのか、それはそぎ落とされた物にはごまかしがきかないから…。


ただ一つのものを絵に描くとき、その距離感や形はごまかしようがなくなり、とたんに難しくなる。

雑誌に空間を取ろうとすると、とたんにデザイナーのセンスが問われてくるようになる。写真やイラストで埋められないページを、見栄えを良くするための構成は大変難しい。シンプルな服ほど、本人自身のスタイルが問われるし、着こなしのセンスが直接出てしまう…。

だからこそ逆に、そぎ落とされた物には恐ろしい程の力があるわけです。
そぎ落としていくことは、とても怖い行為なのだと思います。

そしてそれはデザインだけでなく、人生も同じだと思うのです。
今の自分は、ファッションも人生もシンプルでいたい…。

余計な物には惑わされずストレートに表現したい。生きることとか、愛情とか、仕事、趣味、ファッション、それら全て必要な物だけを残して洗いざらいシンプルな状態に一度戻ってみたいんですね。そこからまた見えてくるものもあると思うし。

シンプルに生きることは、誤魔化しのきかないこと、そして怖いけれど強いものだと思います。

願わくば、シンプルな人生が送れるように生きてみたいと思います。

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