「脱オタクファッションガイド」を読んで


脱オタクファッションガイド 脱オタクファッションガイド 久世オーム社 2005-10-26
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「脱オタクファッションガイド」という本が出版され、増刷につぐ増刷でかなり売れている様子。前々から気になっていたので買って読んでみました。

「脱オタクファッションガイド」は、同名のファッション初心者向けサイトを元にした、初心者向けファッション指南本です。

コンセプトはずばり、「脱オタしてこざっぱりした服装になり、女の子にモテたい!」です(笑)

初っ端からマンガによる解説で、アキバ系オタク青年がファッションに目覚めていく過程が書かれていたり、豊富なイラストとわかりやすい章立てでファッションの初歩から丁寧な説明がされています。かつてこれほどファッションを全く知らない人に向けて書かれた本があったか?というほどの親切さです。

実は初心者向けのお洒落指南本というのはほとんどないわけで、そういう意味でもこの本は貴重だと言えます。ファッションど素人がお洒落に目覚める手始めには、お勧めだと思います。

しかし、実際この本を買ってまでして、初心者のお洒落に役立つか?と言われると、実は微妙なところも多いと思うのです。


その一つが、具体性が欠けているところ。

この本では大部分を使って選んではいけないオタクファッションを指摘しているんですが、実際に着るべき服についてはそこまで具体的に提示されていなんですね。基本的なブランドの紹介や基本アイテムの価格帯も書かれていないし、基本コーディネートの具体例もあまり載っていません。(正確には基本ブランドの紹介は巻末にわずかに載っている程度)

初心者のうちはとにかく実際にどんな服を買えばいいのかを、はっきり提示してもらえる方がわかりやすいと思うんですね。例えば「靴ならまずコンバースの黒(5千円程度)を買え」とか。

女性ファッション雑誌などを見ると、どのメーカーのどんなトップスとどんなボトムやスカートと合わせるべきか、着こなし例が詳細に載っています。

この本にも具体的なブランドや価格帯、そういったものが基本パターンだけでも紹介されていれば、もっと役立つマニュアル本になったのではないかと思うんです。この本は汎用性を重視して、逆に具体性が薄れてしまっているように感じます。

それと紹介されているコーディネート例に疑問点があること。

例えば白シャツに黒いパンツの組み合わせが、お勧めではないと書かれていたりします。(その手のモノトーンの組み合わせって、逆に基本パターンな気がするんですが…) 初心者向けなのに、ちょっと読み手のセンスが必要とされるところがある…。

それともう一つ、これは同サイトにも言えることですが、スーツについての解説がオマケ程度に書かれていて、あまりにお粗末だと言うこと。本来スーツの着こなしは覚えるべきことが多く、一朝一夕で出来ることではありません。それこそ数ページで解説できるほど、スーツは甘くない。

オマケに「スーツの場合、シャツのしたには必ず無地の白Tシャツを着ることがルール」といった、変なことだけ断定的に書かれていたり…。それならいっそ、スーツについて一切書かない方が潔いのではないかと思います。

それと一番の疑問が、サイトがあるのに今更書籍として読む必要があるのか?ということです。すでにネット上で書かれている内容とほとんど同じ物をわざわざ買う必要があるのかという気がしないでもない。

オタクなら当然ネット環境にも詳しいし、脱オタ願望のあるオタクなら同サイトや同様の脱オタ指南サイトをチェックしていると思うんですね。

しかし、この本が初心者に向けて書かれたファッションガイドという稀有な存在であることは間違いないわけで、上記のことを抜かしてもその優位性は変わらないと思います。

電車男が大ヒットし、脱オタが取りざたされる今、ファッションによって脱オタのきっかけとするのは悪いことじゃないと思うんですね。

むしろ中身はオタクでもいい、でも服装にちょっと気を使うだけでこれだけ世界が広がるんだということを、この本は訴えてくれているように思います。

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