洋服の左右対称について


洋服の縫製の良し悪しはどこで見分けるのが良いのか?

色々見分け方がありますが、その一つに「作り手が最も難しいと思う部分をチェックする」というのがあります。スーツの上着なら「アームホールや肩周りの立体感を確かめる」とか、「エリののぼり具合やフィット感を確認する」とか。

ところがそんなマニアックなところでなくても、もっと簡潔な部分で、ベテランのスーツ職人でさえ作るのが難しい部分があるんです。

それは洋服を左右対称に作るということ。


人間の身体は元々左右非対称ですから、オーダーなんかじゃ必ずしも服を左右対称に作るわけではありません。しかし実際左右対称に作ろうとしても、どうしても微妙な誤差がでてきてしまう。

それは素人にはわからない、職人自身しか気がつかない程度のごくわずかなミリ単位の違いだそうです。それでも肩の左右の高さや、エリの高さなどが微妙にずれてしまうことがある。

おまけにテーラーじゃ個人の左右非対称な体形に合わせた上で、襟の高さだけは左右同位置になるように仕上げなければいけないそうで、そうなるとますます難しいわけですね。

さて、既製服では個人の体形など意識せず、全く左右対称に作ればいいわけですから簡単だ…と思ったら大間違い。

既存の既製服の中には、平気で左右の身頃や股下が5ミリくらいずれている物も少なくない。しかも身幅が5ミリずれていても素人にはまず気がつかないのですね。

逆にそれをいいことに、平気で左右のずれた服を売りつけるようなブランドもあるようです。(通常なら検品チェックでハネられるはずなんですが、海外デザイナーズブランドの場合はどうも検品が甘いところが多いしなぁ…)

それどころかひどいものになると、襟の高さや角度が明らかにずれている場合もあります。特にピークドラペル(剣襟)なんかの場合には、顕著にずれている物もある。

そこで簡単に縫製を見分ける方法としては、左右の襟を重ね合わせてみること。これならどんなド素人でも簡単に縫製のずれがチェックできます。

ちなみに手持ちの大半のギャルソン服をこの方法でチェックしてみたところ…、結構合ってる物もあるけれど中には2~3ミリずれているものもありました…。まぁこの程度の縫製誤差ならご愛嬌ってところでしょうかねぇ(苦笑) (昔は神経質にチェックしてましたけど、最近はどうでもよくなってきた…ってのはありますけどね…笑)

ファショコン通信管理人のぷりまさんに聞いたところによると、靴も左右対称に作るのが難しいのだとか。特にかかとの部分はプロが作っても数ミリずれがでてしまうそうです。

それを聞いてみて、早速手持ちのクロケット&ジョーンズなんかを持ち出し、左右の靴底をあわせてみると…、確かにかかとが2~3ミリはズレとるじゃないですか…、明らかにズレてますよ~(笑)

人間の手で左右対称に物を作るのがいかに難しいのか…。それは職人の抱える葛藤の一つなのかもしれません。

ただ既製品の左右非対称については、結構個体差もあるだろうし、縫製誤差の範囲もあるから一概に不良品というわけでもないのですね…。ちなみに自分は同一商品を複数出してもらい、一番縫製が良いものを選ぶこともありますけれど…(笑)

そんな自分が服の左右対称について書いといて言うのもなんですが、まぁあんまり神経質になりすぎない方が良いのかもしれませんね。

人間なんてどうせ左右非対称なわけですしね。オレだってしょせん左曲がりだもん…(←最後下品にしめた~っ!)

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